日本が誇る食品の質や、豊富な食品に由来する栄養機能などは、食品業界が積極的に動かなければ、世界に発信することは難しい。そこで、本コラムでは、日本の素晴らしい研究成果の発信方法について、紹介していきます。

目次

1.食品業界について

発信方法を紹介する前に、食品業界について、紹介していきます。食品業界とは、加工食品 (菓子、レトルト・冷凍食品、乳製品など)、酒類や飲料 (清涼飲料水やアルコール類など)、食品原料 (調味料や小麦粉など) を開発・製造し、消費者に提供している企業分類の総称です1

この食品業界は、農林水産省の「農業・食料関連産業の経済計算」によると、2020年における農業・食料関連産業の国内生産額は、109兆53億円となっており、これは、全経済活動の11.1%を占めます。また、部門別では、農林漁業が12兆3,886億円 (全体比11.4%)、食品製造業が36兆6,307億円 (同33.6%)、関連流通業は34兆8,517億円 (同32.0%)、外食産業は20兆5,910億円 (同18.9%)と、食品製造業の割合が最も大きくなっています。加えて、経済産業省の「工業統計調査」によると、2019年において、食品、飲料製造業に分類される事業所数 (26,646) のうち、従業員数が300人以下の中小零細事業所数は、25,985であり、全体の98%を占めます2

出典: 農業・食料関連産業の経済計算 | 農林水産省 (一部改変)2
※従業員数が300未満の事業者を中小企業として算出

これらのことより、日本の食品業界は、非常に多くの中小零細企業が協力したり、競い合ったりしながら、素晴らしい研究成果がうまれていると考えられます。そして、この研究成果をうまく発信していくことが重要となります。そのため、効果的な発信をするためには、どのような媒体で情報収集されているのか、どのような情報が求められているのか、現在の情勢を鑑みて発信していくことが求められます。

次のセクションでは、発信環境の情勢の変化と発信方法を絡めて、紹介していきます。

2.発信方法と発信環境

皆さんは、研究成果の発信方法について、どのような方法が思いつくでしょうか?

発信方法として、学会や研究会、シンポジウム、講演会などでの発表や学会誌への論文投稿、インターネットを思い浮かべる方が多いと思います。実際に、学会や研究会においては、同様の研究を実施している研究者が集まり、討論ができることから、とても効果的な発信方法であると考えられます。では視点を変えて、情報収集する側の立場になって考えてみましょう。

情報収集の方法は、ここ20年で大きく変わってきたと考えます。それは、インターネットの普及であり、実際に総務省の「通信利用動向調査」において、インターネットの人口普及率は、1997年に9.2%であったのに対し、2021年では82.9%にのぼり、気軽にインターネットにアクセスできるようになりました3。その事例として、約20年前には、論文を閲覧するために図書館などを使用しなければならなかったことが、現在においては、パソコンとインターネット環境があれば、容易に収集する事が可能になってきました。このように情報収集が容易になった一方で、この膨大の情報の中から正しい情報を取得する能力が求められています。

出典: 工業統計調査 | 経済産業省3

これらのことより、インターネットを利用した発信が有用であることがわかります。実際に、インターネットを利用した発信方法の例として、COVID-19の流行後、ホールや講堂などの会場を使用したイベントが制限されたため、学会や研究会、シンポジウムなどがオンラインで活発に行われることとなりました。そこで、次のセクションでは、学会や研究会をオフライン開催する場合とオンラインで開催する場合のメリットとデメリットを紹介していきたいと思います。

3.研究会やシンポジウムのオフライン開催とオンライン開催

オンライン開催とオフライン開催のメリットとデメリットは、以下の通りです。ここからは、下記に示したそれぞれのメリット、デメリットを踏まえて、違いを紹介していきます。

  オフライン開催 オンライン開催
メリット
  • ①参加者間の交流などが活発に行える。
  • ②参加者の離脱が少ない
  • ①開催費用を抑えられる
  • ②大人数の集客ができる ③離れた場所から講演・聴講できる
デメリット
  • ①オンラインと比較すると開催費用がかさむ
  • ②会場により参加者数が決まる ③現地に赴く必要がある
  • ①各個人や運営者の通信環境やITリテラシーの影響を受ける
  • ②交流が難しい
  • ③参加者が離脱しやすい

<開催費用に関して>

オフライン開催に関しては、参加者数が会場の定員に依存するのに対し、オンライン開催に関しては、使用するサーバーの規模に依存します。

<参加に関して>

オフライン開催では、必ず現地に赴く必要があるため、参加者は宿泊費や交通費がかかることに加え、前後のスケジュールによって参加できない可能性も生じます。また、会場に赴くため、途中退出の低減および参加者との交流を活発に行うことができるというメリットがあります。一方で、オンライン開催においては、パソコンとインターネット環境さえあれば、聴講できるため、移動時間などを気にせず、気軽に聴講する事が可能です。

<オンライン開催での注意点>

オンライン開催については、オフライン開催と異なり、インターネット回線を使用するため、オフライン開催では、生じなかった注意点がございます。この注意点とは、運営側での制御が難しい部分があることであり、それは講演者や聴講者の通信環境やITリテラシーの影響を受けてしまう点です。運営が、通信速度が速い回線、大規模のサーバーを用意していたとしても、講演者や聴講者側の回線の通信速度が遅い場合、フリーズしてしまったりします。また、講演者や聴講者側で生じた問題は、各自での対処が求められるため、ITリテラシーが低い場合、イベントが長時間中断されるリスクをはらんでいます。そのため、ITリテラシーの度合いに応じて、事前にレクチャーやリハーサルを行っておくことが重要となります。

オルトメディコのはじめての研究会 (研究会運営事業) では、早稲田大学の矢澤一良先生の監修のもと、研究会やシンポジウムの企画から運営まで、すべてサポートいたします。ご興味がございましたら、お気軽にお問い合せ下さい。

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https://www.はじめての研究会.jp/

4.脚注