学会とは、特定の学問分野を専門とする研究者が集まって知識や情報を交換し、その科学的妥当性をオープンな場で検討論議する場です。このように活発に討論できる場を設立することで、研究成果を共有し、持続可能な開発目標 (SDGs) 達成し、よりよい未来を築いていくことが求められます。そこで、本コラムでは、学会・研究会の設立とそのメリットについて、紹介していきます。

目次

1.学会と研究会

前述したように、学会とは、特定の学問分野を専門とする研究者が集まって知識や情報を交換し、その科学的妥当性をオープンな場で検討論議する場です。また、査読、研究発表会、講演会、学会誌、学術論文誌などの研究成果の発表の場を提供する業務や、研究者同士の交流などの役目も果たす機関でもあります。

日本において、国が公的学会に指定しているのは、政府の諮問機関である日本学術会議の「日本学術会議協力学術研究団体 (以下、「協力学術研究団体」とする。)」である。この団体として活動している学会は、2019年時点において、2,037に上っており、年々、増加しています1

また、類似した組織形態に研究会がありますが、こちらは学会よりも小規模であることが多く、学会に極めて近いものから単なる内輪の趣味の集まりまで様々な形態が存在します。自由度の高い研究会からはじまり、規模が拡大に伴い学会を設立するケースもあります。

2.設立のメリット

前述したように、多くの学会や研究会が運営されています。学会や研究会を設立し、会員の募集、学術集会や講演会を実施する事により、以下のようなメリットが生まれると考えられます。

<企業のメリット>

企業の研究者において、以下のメリットが考えられます。

  • ① 素材や技術のPR
  • ② 市場での認知度や需要の増加
  • ③ 共同研究や事業創出の機会の獲得

開発した素材や技術を発表することで、その分野をリードしていることをPRする事ができます。それに伴い、市場での認知度が向上し、その発表を聴講していた顧客からその素材が採用されるなど、需要の増加が期待されます。また、同じ分野の研究を進めているアカデミアの先生方との共同研究の機会や事業創出のチャンスもあります。

これにより、『先端研究と革新技術による商品開発や事業創出』が目指せます。

<アカデミアのメリット>

一方で、アカデミアの研究者においては、以下のメリットが考えられます。

  • ① 産業界の動向やニーズの把握
  • ② 研究成果の応用と社会実装
  • ③ 研究資金の獲得チャンス

企業の発表を聴講することで、産業界でどのような素材や商品に需要があるのか把握する事が出き、加えて、進めてきた研究をどのように社会へ実装していくのかのアイディアを獲得する事ができます。また、企業のメリットにもあるように、企業との共同研究の機会が生まれ、研究資金を獲得できる可能性があります。

これにより、『産業界との交流により研究の発展』が目指せます。

ここまでは、学会や研究会の概要や設立・参加のメリットを紹介してまいりました。次のセクションでは、学会や研究会の設立について紹介していきます。

3.設立方法

実際に、学会や研究会を設立するには、どのようにしていけばよいのでしょうか?学会や研究会の設立には、特定の設立方法や認定方法はないので、思い立った際に設立できます。しかし、学会の活動において、格式や影響力を求める場合は、条件を満たした上で日本学術会議に申請し、協力学術研究団体の認定を受けることがより良いと考えられます。また、学会の存在を対外的に示す方法として、法人化する方法もあります。そこで、次のセクションでは、協力学術研究団体および法人化について紹介していきます。

3.1.日本学術会議協力学術研究団体

まずは、協力学術研究団体について紹介します。協力学術研究団体に認定されるメリットは、国から公的学会として認定されることと同義であることから、格式や影響力が高まる点です。

この協力学術研究団体の仕組みは、日本学術会議と各団体との間で緊密な連携・協力関係を持つことを目的として、平成17年10月に設けられました。この協力学術研究団体に認定されるためには、以下の要件を満たす必要があります。

<認定の要件2>
  • ① 学術研究の向上発達を主たる目的として、その達成のための学術研究活動を行っていること
  • ② 活動が研究者自身の運営により行われていること
  • ③ 構成員(個人会員)が100人以上であり、かつ研究者の割合が半数以上であること
  • ④ 学術研究(論文等)を掲載する機関誌を年1回継続して発行(電子発行を含む。)していること

また、この要件における「研究者」の定義については、以下の通りです。

<「研究者」の定義2>
  • ① 大学、高等専門学校、大学共同利用機関等において研究に従事する者
  • ② 国立試験研究機関、特殊法人、独立行政法人等において研究に従事する者
  • ③ 地方公共団体の試験研究機関等において研究に従事する者
  • ④ 公益財団法人、公益社団法人、一般財団法人、一般社団法人等において研究に従事する者
  • ⑤ 民間企業において研究に従事する者
  • ⑥ その他、当該研究分野について、学術論文、学術図書、研究成果による特許等の研究業績を有する者

これらの要件を満たすことで、協力学術研究団体として認められます。

3.2.法人化

さて、法人化はどうでしょうか。2019年時点において、32.3%の学会が法人化しています2。法人化のメリットは、社会的信用を獲得し、法人契約が可能になる点に加え、権利義務などを明確化できることです。一方、デメリットは、法人となるため、法規制の対象となり、法人税をはじめとして、法人としての運営費用が発生してしまう点です。そのため、慎重に検討し、法人化していくことが求められます。

4.学術大会やシンポジウムの運営

学会や研究会の設立について、紹介してきましたが、学会を設立したとしても、学術大会やシンポジウムを開催し、討論する場を設けたり、学会詩を発行したりする必要が出てきます。そこで、ここからはシンポジウムの準備から開催までの流れを紹介したいと思います。

<シンポジウム開催までに必要な作業2>
  • ①シンポジウムのテーマの決定
    最初に、シンポジウムにおけるテーマを決定する必要があります。このテーマを起点に講演者の先生方を選定していく必要があるため、慎重に決定する必要があります。
  • ②講演者の選定・打診
    ①のテーマに沿って、先生方を選定し、打診していきます。この選定については、集客にも影響を与えますので、重要な作業の1つです。また、先生方への伝手が必要な対応になるので、難易度が高い作業であると考えられます。
  • ③開催日時や会場の選定
    開催日程については、先生方の都合と類似した分野の学術大会とかぶらないように決定していきます。また、会場については、アクセスのしやすさや目的、参加者数の予測、予算から会場を選定していきます。
  • ④Webサイトの構築
    現在の動向を周知するために、Webサイトが必要になってまいります。Webサイトは、シンポジウムの顔になりますので、外部に委託した方が質の高いサイトが構築できると思います。
  • ⑤抄録集の作成
    抄録集については、電子データで提供するのか、冊子で提供するのかという媒体に加え、どのような内容 (経歴、要旨、発表スライド) を掲載するのかを決定しておく必要があります。
  • ⑥参加者の集客・集金
    参加者の集客や集金の管理方法については、参加申し込み前に決定しておく必要があります。集客については、SNSやイベント告知サイトを使用するのか、集金については、どのタイミング (申込時、事前、当日など) で対応するのか、どのような媒体 (集金システム、銀行振込、現金など) を使用するのか検討する必要があります。

する際には、この作業に加え、「発表者の募集や審査」の作業が加わるかと思います。これらの作業を委託したいと思いませんか?

オルトメディコのはじめての研究会 (研究会運営事業) では、早稲田大学の矢澤一良先生の監修のもと、これらの運営作業をすべてサポートさせていただきます。ご興味がございましたら、お気軽にお問い合せ下さい。

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5.脚注